おかえりみどり
Knot total wedding produce池田 真莉Wedding ProducerNo. 3
Knot total wedding produce池田 真莉Wedding ProducerNo. 3
「場所にとらわれない結婚式」をプロデュースし、起業してからわずか3年で予約の絶えないウェディング会社へと成長させた、Knot total wedding produce 代表の池田真莉さん。人気の秘密は新郎新婦の想いに寄り添ったウェディングと、「結婚式に関わるすべての人を笑顔にしたい」という想い。そんな池田さんのあたたかさは、実は彼女の原風景と深い関係がありました。
私の実家があるのは、「河内町」という、山と山との山間にある緑豊かな地域なんです。人口が少ない田舎町ということもあって人と人の距離感が近く、名字を聞くだけでどこに住んでいる誰なのかがわかるくらい。そういう距離感で人と付き合っているからなのか、地元の町そのものがとてもあたたかい感じがするんですよね。実は、今お手伝いさせてもらっている結婚式も、出雲や島根、東広島というような、いわゆる田舎の町でプロデュースさせていただく機会が多いんです。
私がつくる結婚式では、街に住んでいる二人にとって想い入れのある人たちを巻き込んで、街そのものを元気にするということを大切にしています。私も似たような田舎の環境で育ったこともあって、つくり手である私自身の満足度もすごく高い(笑)。結婚式を通してこういうお手伝いができることには、すごく幸せを感じています。そう考えると、私の原点や原風景というのと今自分が行っている表現というのは、どこか繋がる部分があるのかもしれません。
そもそもKnot wedding では、普通の結婚式とは違って、ゼロベースからつくる結婚式を目指しています。まずは、新郎新婦さんの人生をヒアリングするところからスタート。その際、「なぜ結婚式を挙げようと思ったんですか?」という質問は必ず投げかけるようにしています。結婚式というのは、たくさんの準備を必要とする大変なもの。そんな苦労が多い催し物だからこそ、新郎新婦さんの「式を挙げよう」と思った理由の中に、二人の本質的な想いがあらわれるんじゃないかと思っているからなんです。
その後、ヒアリングから得た二人の背景からコンセプトを見つけ出し、ストーリーを紡いでいきます。その際、結婚式に不可欠な式場も、二人が何を大事にしているかを聞きながらリストアップ。さらに二人に選んだ会場を見てもらいながら、理想の場所で式を挙げられるようにセッティングしていきます。そうやって一緒に結婚式をつくりながら、式本番まで新郎新婦の二人のテンションも上げていく。理想は、新郎新婦さんに非常に満足感の高い準備期間を過ごしてもらうこと。結婚式前日に「明日の本番がなくてもいいかも」と思ってもらえるくらい濃密な時間をつくりたいんです。
また、Knot wedding では、新郎新婦さんやお客さんだけでなく、通常の式ではあまり注目されないスタッフの人たちにもスポットを当てながら、式に関係するいろんな人たちの“喜ぶ顔”をつくっていきます。Knot wedding の“Knot”には結び目という意味がありますが、結婚する新郎新婦はもちろんのこと、結婚式を介して自分の大切な人と大切な人を繋げていくということも含んでいます。それがこの仕事に携わる上で重要な使命だと感じているんです。
以前結婚式会場で働いているとき、会場側が自分たちの利益を上げることを目的化してしまっていて、一番大切な新郎新婦さんの意図を汲んであげられてないと思うことが多々ありました。そういうシーンに出会うたび、私はいつももどかしさを感じていて。また、結婚式をつくり上げていく上では本当に多くのスタッフが関わっているんですけど、実際にはその中の一部の人しか人目につかない。そういう部分にも哀しさを感じていました。
私はそこにちゃんと意図とストーリーさえあれば、何も飾らなくてもかっこいい結婚式ができるんじゃないかと思っています。大事なのは、新郎新婦さんやゲストのみなさん、そしてスタッフのみんな全員が笑顔でいること。そういう景色の中だったら、たとえ予期せぬアクシデントが起こっても、丸ごと楽しめてしまうと思うから。私はそんな予定調和ではない、記憶に残る結婚式をこれからもお手伝いしていけたらと思っています。
取材中、「いつか手紙を書くためのホテルを作りたい」と語っていた池田さん。その心は、「手紙を書くということは誰かを深く思い、それを丁寧に伝える愛しい行為。思わず大切な思いをつづりたくなるようなそんな時間と空間を演出したい」。人を想い、その想いを伝えることを大切にする——。実家のある田舎町で培ったというこの姿勢は、池田さんからお話を聞きながら、彼女の行動における大きな指針になっているんだと感じました。そしてその姿勢は、彼女がプロデュースする結婚式にも貫かれ、今日も多くの人々に笑顔を与えています。「私にとって準備が本番で、結婚式当日は楽しみでしょうがない打ち上げのようなものなんです」と無邪気に笑う姿がとても印象的な池田さん。貴重なお話を、ありがとうございました。