廣島スタイロ

原点回帰の赤

3STORM HIROSHIMA仲摩 匠平プロ選手兼経営者No. 8

2019年、広島に新しいスポーツチームが誕生する。そのスポーツとは、「3 x 3 (スリーバイスリー)」という東京2020オリンピックの正式種目にも認定されている、今注目のバスケットボール競技。全国リーグ&トーナメントを展開し、広島からは、プロバスケットボール選手として8年間プレーした仲摩匠平さんが発足したチーム「3STORM HIROSHIMA」が参戦する。プロ選手兼経営者として挑む「3 x 3」には、彼が彩る地元への想いと未来絵図があった。

3 x 3への可能性 バスケで地域が楽しめるチームを作りたい

自分にとってのバスケットボール人生の原風景は、地元である呉の200階段です。映画「海猿」のロケ地としても有名な場所ですが、中学校への通学路だったり、バスケボール部の時のトレーニングで走った階段でもあって、間違いなく人生で一番走った場所ですね(笑)。でも、不思議とあの頃は「辛い」という概念は無くて、コーチの指導が上手かったんだと思うのですけど、競争させるというか、ゲーム感覚で楽しみながら走っていました。だから、今でも「辛かった」という記憶ではくて、あの200階段を走っていた日々というのは、「楽しかった」記憶なんです。

シーズン中でもオフでも、トレーニングでは必ず200階段を走っていて、ここに立つと無心になれるというか、ここからの景色を見るだけで、あの頃の純粋にバスケを楽しんでいた感覚がフラッシュバックされて、初心に戻れる場所です。

2018年に広島ドラゴンフライズを退団することになって、その時、ほかのチームからも声を掛けていただいていて、プロとしてほかのチームで続けていくという選択肢もあったんですが、そこで「3x3(スリーバイスリー)」という競技と出合い、どんどん知っていくうちに、今からほかのチームに移籍入団してプレーするよりも、このタイミングでこの競技のチームを立ち上げたほうが今後、面白いんじゃないかと思ったんです。初心に返るというか、バスケットボールという競技を純粋に向きあえる良い機会かもしれない、そう思えたんです。さらに、まだ認知度の低い競技が、東京2020オリンピックの正式種目に決定している。そこに可能性を感じたんです。

3x3(スリーバイスリー)というのは3人制のバスケットボールなんですけど、皆さんに馴染みがある呼び方で言うと、3 on 3ですかね。ストリートバスケが発祥で、五人制のバスケットボールとはルールも違って、また魅力も異なるんです。普通の5人制バスケットボールの試合ですと、会場が体育館や球場に限定されてしまいますが、3 x 3に於いては入場に規制もなく、場所さえあればどこにでもコートとリングを設置して行える。その公共性の高さも魅力の1つなんです。バスケットボール自体に興味がなくても、日常の中にバスケットコートを出現させる事によって、「なんか音がする。あ、球技やってる。これが3 x 3か」って具合に知ってもらいやすい、イベント性とエンターテインメント性の高い競技なんです。

チームを立ち上げた際の記者発表の場で「強いチームを作っていきますか?」と尋ねられたのですが、自分の中で、なんかピンとこなくて、選手として強いチーム作りというのは個人の成績であったり、チームで優勝することだと思うんですけど、経営の立場からすると、ほかのスポーツを見ていても、じゃあ優勝したら強いのか?という疑問は生まれます。

優勝しても街が盛り上がってなかったり、チーム自体知られていなかったり、経済的に苦しい思いをしているチームもあります。なので、経営の立場からすると、まずは根の強いチーム作りを目指します。単発的に勝った負けたではなくて、勝とうが負けようが、広島という土地に応援してもらえるような、地域に根付いたチームを作るというのが、経営の立場からいうと強いチームだと思うんです。だから今は、自分は選手というよりは経営側に立って、まずはこのイベント性の高い3 x 3という競技で地域と連携をとって盛り上げていくことによって、結果、広島にこの3 x 3という競技、そしてバスケットボールに興味を持つ人が増えてくれればうれしいなって思います。

偶然か必然か、中学校のバスケチームのユニフォームが赤色で、あと自分の地元の呉という街は、港町で赤れんがの倉庫や建物も多くて、赤は呉のイメージカラーの1つなんです。自分が新しく立ち上げた3 x 3(スリーバイスリー)のチームカラーの色も赤と黒なんですが、単純に赤には「強い」イメージを持っているので(笑)、強豪チームになることを確信しています。

取材後記

この取材時に、撮影のため仲摩さんと200階段を登りましたが、中学校のトレーニングの際に走っていたというのが信じられないくらいの急勾配で、登っている最中に心を何度か折られました(笑)。しかし、頑張った分、登った場所からの景色は素晴らしくて、仲摩さんは今まで、プロのバスケットボール選手としての階段を一段一段上ってこられたんだと思います。そこからの景色も素晴らしいものであったと思うんですが、そして、今、新たに「3 x 3」 という階段を上ろうとしています。自分も取材をするまで知らなかった競技ですが、ストリートバスケが発祥というだけあって、いつでも、どこでもコートとリングを設置すればそこでリーグが開催できるという公共性の高さと、身軽さはとても魅力だと思いました。逆に言えば、 地域の協力が不可欠な競技でもあります。 地域と共に「3STORM HIROSHIMA」は、一緒に階段を上っていく。広島に新たなカルチャーを一緒に根付かせていきたいですね。

Profile 仲摩 匠平 広島県呉市出身。高校3年生の時にインターハイベスト16、ウィンターカップ出場を果たす。大学卒業後、2010年、「島根スサノオマジック」にチームトライアウトを経て入団。島根初の西地区3位入り、プレイオフ地区準決勝進出に貢献した。2014年、地元のチームでもあるNBL「広島ドラゴンフライズ」と契約。4年の活躍を経て、2018年に退団。同年、3人制バスケットボール「3x3(スリーバイスリー)」のプロバスケットボールチーム「3STORM HIROSHIMA」を発足。201 9年シーズンは3 x 3.EXEに参戦決定。